ビルクリーニング分野でも、外国人材の採用を検討する企業は増えています。
一方で、「特定技能外国人を採用したいが、自社の現場で安定して勤務時間を確保できるのか」「短時間の現場が多く、直接雇用で受け入れるのは難しいのではないか」と感じている企業も少なくありません。
特定技能外国人は、必要な時間だけ配置する派遣スタッフとは異なり、自社で直接雇用し、勤務時間や配置現場、教育・支援体制を整える必要があります。
本記事では、特定技能「ビルクリーニング」の現状を踏まえながら、外国人材を受け入れる際に整理しておきたい勤務時間、配置現場、管理体制、採算性について解説します。
ビルクリーニング分野の伸び率は全体をやや下回る
出入国在留管理庁の公表資料によると、2025年12月末時点で、ビルクリーニング分野の特定技能1号外国人は8,395人です。
2025年6月末の7,418人から半年間で13.2%増加しました。
同じ期間における特定技能1号全体の増加率は14.8%です。ビルクリーニング分野も増加していますが、直近半年間の伸び率では、特定技能1号全体をやや下回っています。
この差は大きいものではありません。
ただ、人材確保が難しい業界状況を考えると、特定技能の活用が一気に広がっているとは言い切れません。
背景には、ビルクリーニング業界の勤務体系と、特定技能制度の仕組みがかみ合いにくい部分があります。
特定技能は「派遣の代わり」としては使えない
ビルクリーニングの現場では、時間帯や曜日によって必要な人数が変わります。
そのため、現場ごとの欠員や繁閑に合わせて、パート従業員や派遣スタッフを組み合わせている企業は多いです。
しかし、特定技能「ビルクリーニング」では、派遣会社から必要な時間だけ人材を受け入れる運用はできません。
ビルクリーニング分野では、建築物清掃業または建築物環境衛生総合管理業の登録を受けた営業所で、特定技能外国人を直接雇用することが必要とされています。
つまり、特定技能外国人を受け入れる場合は、欠員が出た現場にその都度配置するのではなく、自社の常用人材として、継続的に勤務できる仕事を用意する必要があります。
短時間の現場が多い企業ほど、近隣現場の組み合わせ、現場間の移動時間、シフト管理、現場責任者による指導・確認体制を事前に整理しておくことが重要です。
従来の人員調整の方法をそのままにして、特定技能外国人だけを追加しようとすると、現場や本社の管理負担が大きくなる可能性があります。
そのため、特定技能を検討する際は、採用費だけでなく、配置する現場、勤務時間、移動、指導体制まで含めて考えることが大切です。
公開されている企業事例から見る取組
ここからは、公開されている企業事例をもとに、外国人材の受入れにあたって各社がどのような工夫をしているのかを見ていきます。
※各事例は、全国ビルメンテナンス協会「ビルクリーニング外国人材事例集」の公開情報をもとに、株式会社活喜が要約しています。
【ハウス美装工業株式会社】複数業務を組み合わせて勤務時間を確保
香川県高松市のハウス美装工業株式会社では、2025年12月の取材時点で、約40名の外国人材が在籍しています。
同社では、ホテル客室清掃を中心に、オフィスビル清掃なども組み合わせています。
ホテル清掃は、8時30分頃から14時頃までの5〜6時間勤務が中心です。そのため、1つの現場だけでは1日分の勤務時間を確保しにくく、早朝のオフィス清掃や商業施設清掃を前後に組み合わせています。
シフトは本社で1週間単位の枠組みを作り、できるだけ固定化しています。また、住居は会社が手配し、本社近隣に配置されています。
この事例から読み取れるのは、単に複数現場を回しているということではありません。
勤務時間、現場間の移動、住居、シフトを会社側で管理し、継続的に働ける形を作っている点が参考になります。
【持続未来株式会社】フルタイム勤務を組みやすい現場に配置
広島県の持続未来株式会社では、2026年2月の取材時点で、技能実習生5名、特定技能4名、配偶者ビザの外国籍従業員を含めて、計11名の外国人材が在籍しています。
同社では、外国人材の配置先は、官公庁施設、オフィスビル、病院となっております。
勤務時間は、7時から16時、8時から17時など、フルタイム勤務を組みやすい現場が中心です。また、配置にあたっては、人数の多い現場や責任者がしっかりしている現場を選んでいます。
教育は、大規模な集合研修ではなく、現場でのOJTが中心です。各現場の責任者や先輩従業員が、日常業務の中で教える形を取っています。
この事例からは、外国人材を採用してから配置先を考えるのではなく、勤務時間と指導体制が安定している現場を選ぶことの重要性が分かります。
【株式会社OKビルサービス】管理できる人数と業務に絞る
兵庫県の株式会社OKビルサービスでは、2026年1月の取材時点で、外国人材3名が在籍しています。
同社は、過去にホテル客室清掃で、留学生や技能実習生を含めて30〜40名規模の外国人材を受け入れていた時期がありました。
しかし、休み希望や日本語試験の日程などによるシフト管理が難しく、最終的にホテル清掃事業から撤退しました。現在は、定期清掃の現場を中心に、8時から17時を基本とする勤務形態で外国人材を配置しています。
この事例から読み取れるのは、受入れ人数を増やすことだけが正解ではないということです。
自社で管理できる人数、勤務時間が安定しやすい業務、指導しやすい現場に絞ることも、外国人材を継続して受け入れるための現実的な判断といえます。
事例から見える受入れのポイント
公開されている企業事例を見ると、外国人材を受け入れている企業は、単に人材を採用しているだけではありません。
共通しているのは、採用前に「どの現場で、どの時間帯に、誰が管理するのか」を整理している点です。
例えば、複数の現場を組み合わせて勤務時間を確保する、フルタイム勤務を組みやすい現場に配置する、自社で管理できる人数や業務に絞るなど、各社の状況に合わせた工夫が見られます。
特定技能外国人を採用する場合、採用できるかどうかだけでなく、受入れ後に無理なく運用できるかが重要です。
特に確認したいのは、次のような点です。
- 安定した勤務時間を確保できる現場があるか
- 現場責任者が日常的に作業を確認できるか
- 近隣現場を組み合わせる場合、移動に無理がないか
- 欠勤や一時帰国時の代務を用意できるか
- 現場単位で採算を確認できるか
- 外国人材が相談できる担当者を社内で決められるか
また、住居の確保、在留資格の手続き、定期面談、生活相談などは、登録支援機関に委託することもできます。
登録支援機関は、外国人材の生活面や手続き面を支える重要なパートナーです。支援の質や対応範囲は機関ごとに異なるため、自社の体制や現場に合った登録支援機関を選定することが、受入れを成功させるうえで大きなポイントになります。
特定技能以外の外国人材も選択肢になる
ビルクリーニング業務では、特定技能以外にも「永住者」「日本人の配偶者等」「定住者」などの身分系在留資格を持つ外国人も採用できます。
これらは職種制限がなく、試験や支援計画も不要で、フルタイム・短時間いずれの雇用も可能です。ただし、海外からの大量採用には向かず、国内在住者の個別採用が中心となります。
そのため、
- フルタイム:特定技能外国人
- 短時間:身分系外国人
- 欠員対応:日本人パート・派遣
といった組み合わせも有効です。
採用時は在留カードで資格・期間・就労制限の確認が必要となります。「留学」「家族滞在」は身分系ではなく、原則週28時間以内の制限があります。
ビルクリーニング分野の外国人採用はKAKKIにご相談ください
ビルクリーニング分野で外国人材を採用する場合、重要なのは「どの在留資格の人材を採用するか」だけではありません。
自社の現場で勤務時間を確保できるか、現場責任者が日常的に確認できるか、どの登録支援機関と連携するか、日本語や生活面の支援をどこまで行うかまで含めて考える必要があります。
KAKKIでは、外国人材の紹介だけでなく、登録支援機関としての支援や、日本語教育にも力を入れています。
採用前の段階から、現在の現場や勤務時間を確認し、特定技能外国人が適しているのか、身分系の在留資格を持つ外国人材の採用がよいのか、または既存のパート・派遣と組み合わせるべきかを一緒に整理します。
また、登録支援機関の選定についても、自社に合った支援体制を構築できるようサポートしています。
- 「短時間の現場が多いが、外国人材を採用できるか」
- 「特定技能と身分系の外国人材のどちらが自社に合うか」
- 「登録支援機関の選び方や支援内容について相談したい」
このようなお悩みがありましたら、ぜひ一度KAKKIにご相談ください。制度から採用方法を決めるのではなく、自社の現場に合った人材確保と支援体制を整えることが大切です。