物流業界で今、注目されているのが、外国人材をまず「物流倉庫」で採用し、将来的にトラックドライバーへ育成する方法です。
2027年4月1日から育成就労制度がスタートし、物流倉庫分野での外国人材の受入れが本格化します。
物流倉庫分野は2026年1月に特定技能および育成就労の対象分野に追加されました。特定技能1号についても、技能評価試験や協議会などの準備が進められています。
実際、2026年3月にはトラック協会から会員企業に対し、物流倉庫分野と、すでに始まっている特定技能「自動車運送業分野」とのシナジー効果が期待できるとして、物流倉庫分野の説明会が案内されています。
では、
「倉庫で採用 → 経験を積む → 運転免許取得 → トラックドライバーへ」
というキャリアは本当に可能なのでしょうか。
1.特定技能「物流倉庫」から「自動車運送業」への移行は可能?
制度上、他の特定技能分野から自動車運送業分野への転籍は想定されています。
国土交通省の最新の「特定技能(自動車運送業分野)Q&A」でも、「他分野から自動車運送業分野に転籍した場合」について明記されています。
したがって、物流倉庫分野で働いている外国人材も、必要な要件を満たし、在留資格に関する手続きを行えば、自動車運送業分野のトラックドライバーを目指すことができます。
ただし、物流倉庫の特定技能のままトラック配送を行うことはできません。
物流倉庫分野で認められているのは、貨物の受渡し、検品、移動、格納、ピッキング、流通加工などの倉庫作業です。
物流倉庫分野については、KAKKIのこちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:特定技能「物流倉庫」とは?受入れ対象企業・要件・業務内容を解説
https://kakki-co.jp/guide/visa/article-287
2.「倉庫→ドライバー」で特に重要なのが運転免許
自動車運送業分野へ移行する際には、
- 自動車運送業分野特定技能1号評価試験への合格
- 必要な日本語能力
- 日本の自動車運転免許の取得
が必要です。
トラックドライバーの場合は、日本の第一種運転免許が必要となり、実際に運転する車両によって普通・準中型・中型・大型など必要な免許区分が変わります。
特に「倉庫→ドライバー」というルートでは、技能評価試験だけでなく、運転免許をいつ・どのように取得するかが非常に重要です。
日本にすでに居住している外国人の場合、現在の在留資格から特定技能「自動車運送業」へ変更申請する前に、日本の運転免許を取得しておく必要があります。
また、自動車運送業分野の評価試験を受験する時点でも、日本または外国の有効な運転免許を保有している必要があります。
そのため、将来的にドライバーへの移行を考えるのであれば、採用時点で母国の運転免許を持っているか確認しておくことも重要です。
3.外国人でも日本の運転免許を取得できる?
外国人でも日本の運転免許を取得できます。
主な方法は、
- 日本の教習所や運転免許試験場を利用して、日本の免許を新たに取得する
- 母国などで取得した外国免許を、日本の免許へ切り替える「外免切替」を利用する
という2つです。外国籍の方についても、日本の運転免許の新規取得手続が設けられています。
外免切替を利用する場合は、原則として有効な外国免許を持ち、その免許を取得した後に発給国で通算3か月以上滞在していたことなどが必要です。
外免切替は以前より難しくなっている
外国人ドライバーを育成するうえで注意したいのが、外免切替の難易度です。
2025年10月から外免切替の審査が厳格化され、知識確認は従来の10問から50問に増加し、技能確認についても横断歩道の通過などの課題が追加されました。
国家公安委員会によると、厳格化後の2025年10月~12月の通過率は、知識確認が42.8%、技能確認が13.1%でした。2024年はそれぞれ92.5%、30.4%だったため、特に技能確認は難易度が高くなっていることが分かります。
そのため、母国で運転経験がある外国人でも「外免切替なら簡単に日本の免許を取得できる」と考えるのは注意が必要です。
したがって「倉庫→ドライバー」という育成を考える企業は、外免切替だけを前提にせず、日本での免許取得も含め、取得期間や費用をあらかじめ育成計画に組み込んでおくことが重要です。
4.「倉庫→ドライバー」の育成イメージ
物流会社であれば、次のような流れが考えられます。
① 物流倉庫分野で採用
まずは物流倉庫分野で採用し、検品、格納、ピッキング、出荷などを経験してもらいます。
採用時には、将来ドライバーを希望しているか、母国の運転免許を持っているか、運転経験があるかも確認します。
② 倉庫で働きながら日本語・物流知識を身につける
半年~1年程度を目安に、倉庫業務を通じて物流の流れや安全意識を身につけてもらいます。
あわせて日本語教育を行い、配送先での会話、伝票確認、交通・安全に関する日本語も学んでもらいます。
③ 日本の運転免許を取得する
倉庫で働きながら、ドライバーへの移行に向けて免許取得を進めます。
母国免許がある場合は外免切替、ない場合は教習所などで新たに取得します。将来運転する車両に応じて、準中型・中型・大型など必要な免許も検討します。
④ 自動車運送業分野の評価試験に合格する
免許取得と並行して、自動車運送業分野の評価試験の準備を進めます。
なお、評価試験を受験するには、日本または外国の有効な運転免許を保有している必要があります。
⑤ 1~2年程度を目安にドライバーへ移行
日本の運転免許、評価試験、日本語要件などを満たした後、在留資格変更許可申請を行います。
企業の育成モデルの一例としては、
物流倉庫で採用 → 日本語・物流教育+免許取得 → 1~2年程度を目安にドライバーへ移行
という流れが考えられます。
母国免許があり外免切替がスムーズに進む場合は、より早く移行できる可能性もあります。
倉庫で物流の基本や荷物の扱い方、職場の日本語、安全ルールなどを身につけたうえでドライバーを目指せることは、企業・外国人材双方にメリットがあります。
5.企業側が注意したい2つのポイント
特定技能1号の「5年間」はリセットされない
他分野から自動車運送業分野へ移行しても、特定技能1号として在留した期間は通算されます。
例えば、物流倉庫分野で2年間勤務してから自動車運送業分野へ移行した場合、原則として残り3年間となります。
そのため、ドライバーへの育成を考える場合は、倉庫で何年も働いてから検討するのではなく、早い段階から本人の希望を確認して準備を進めることがポイントです。
なお、2026年8月現在、物流倉庫分野と自動車運送業分野はいずれも特定技能2号の対象ではありません。そのため、現時点では「物流倉庫→自動車運送業→特定技能2号」という長期就労ルートを前提にすることはできません。今後、2号の対象が拡大されるかについては、最新情報を確認する必要があります。
会社も自動車運送業分野の受入れ要件を満たす必要がある
外国人本人が免許と試験の要件を満たせば、どの倉庫会社でもそのままドライバーに変更できるわけではありません。
受入れ企業も、自動車運送事業を経営していること、自動車運送業分野特定技能協議会へ加入すること、「働きやすい職場認証」またはトラック分野ではGマーク等の要件を満たす必要があります。
そのため、倉庫と運送の両方を行っている物流会社ほど、この育成モデルを取り入れやすいといえるでしょう。
まとめ「倉庫→ドライバー」は十分に実現可能な人材育成ルート
物流倉庫分野の追加によって、
物流倉庫で採用 → 日本語・物流業務を習得 → 運転免許取得 → 自動車運送業分野へ移行
という外国人材のキャリア形成が、現実的な選択肢になってきました。
もちろん、倉庫で働けば自動的にドライバーになれるわけではありません。日本の運転免許の取得や自動車運送業分野の評価試験への合格、在留資格の変更など、必要な準備と手続きがあります。
一方で、採用時から本人の希望や運転経験を確認し、倉庫で働いている間に日本語教育や免許取得を計画的に進めていけば、「倉庫→ドライバー」というキャリアは十分に実現可能です。
特に、倉庫作業員とトラックドライバーの両方で人材不足を抱えている物流会社にとっては、外国人材を単に採用するだけではなく、倉庫で経験を積んだ人材を将来のドライバーとして育成する新しい採用・人材育成モデルとして活用できる可能性があります。
なお、2026年8月現在、物流倉庫分野は特定技能の対象分野に追加されていますが、特定技能1号技能評価試験の正式な開始時期はまだ調整中です。 今後、試験日程や分野別協議会などの詳細が順次公表される予定です。
KAKKIの支援
KAKKIでは、特定技能をはじめとする外国人材の採用から入社後の支援、日本語教育まで対応しています。
物流倉庫・自動車運送業で外国人材の採用をご検討の企業様は、お気軽にご相談ください。